「人新世の資本論」の読書会
令和3年6月にオンラインで開催された読み人倶楽部の読書会は、最近目につくベストセラー本「人新世の資本論」を課題本に取り上げてみました。
白熱した結果、7人で2時間半、一切休憩なしで語り合ってしまったのでした💦
それぞれの大まかな感想は次の通り!
- 読みやすく理解しやすかった
- 今でもマルクスで新しい文献を研究できてうらやましい
- ブックカバーが二重でびっくり
- 広告によく出てくるのではやっているなと思った。
- 脱成長はいやだなと思うけど、気持ちはわかる。
- 節制したくはないが長くは働きたい。
- 資本論を学べる本かなと思ったのに学べなかった。
- 初めから最後まで分かりやすく読めた。
- いろんな例示、同じような考えがたくさんあると思った。
- ちょっと語気が強い。言いたいこと、主張を強く感じる。
- 論理よりも勢い最高という感じ。
- 貧困、紛争などの視点の話ももう少しあればよかった。
- 去年ぐらいから斎藤幸平が流行っている。おもしろい人が出てきた。
- この人が言っていることがコンパクトにまとめられていておもしろかった。
- アジテーションを意図的にしている。
- 実例が多く、可能なのかもしれない。希望なのかも。
- 消費社会に何の疑問もなく生きてきた。
- 新書ではあったけれど経済の話を理解できるかと不安だった。
- 難しい部分もあったけれど全体的にはわかりやすい。
- 分断の時代は終わり統合していこうとしている。時代の流れに乗っている。
- 環境的なところでどんづまっていると思う。
- 資本主義、豊かではあるけれどメンタルで病んでいく。
- 矛盾を考え直さないといけないときに来ていて、解決策を示している。
- 気候毛沢東主義という言葉がおもしろかった。
- 正直難しい経済用語は飛ばして読んだ。
- 南北問題、グローバルサウスからの収奪など、心に刺さった。
- 現実を突きつけられ、おいしいものを食べに行くのが罪悪感を持つようになった。
- 正直コミュニズムという解決策は無理だと思う。
- 他にどういうソリューションがあるか考えた。
- 日本人の意識が遅れている。
- 水素燃料やCO2吸収技術など、現実的な解決策が良いと思う。
さらに派生して、SDGs、協同組合や自治会といった共同体、クラウドファンディング、日本における都市と地方の収奪、ブルシットジョブ、エッセンシャルワーカーなどなど話題となりました。
ここからは参加者の一人を混乱させてしまった炎上覚悟の個人的批評をまとめてみたいと思いますw
この本で主張していることの本質は、
- 気候危機はもう始まっている。
- このままでは将来大変なことになってしまう。
- 原因はCO2の増大であり、CO2増大の原因は資本主義にある。
- 将来訪れる最悪の事態を避けるためには、資本主義をやめて、脱成長コミュニズムに移行するしかない。
ということだと思います。
まず言いたいのは、そもそも今、気候危機なのか?ということ。
著者は「二酸化炭素が気候変動を引き起こし、熱波やスーパー台風という形で日本を襲うようになってきた(53頁)」と言っている。しかし、2018年のデータを見れば確かに日本は暑かったが、北米やカザフスタンなどでは寒く、これらは気圧配置の変化や大規模な大気の流れの変化といった自然変動によるものだと思われる。スーパー台風についても、1951年からの統計で日本に上陸した強い台風ランキングを見れば、1位は1961年であり、一番新しいのが1993年で3位。それ以外のランキングしている台風はすべてそれ以前のものなので、台風は強くなっていないことがわかります。
それで、将来は大変なことになるのかというと、著者は危機に直面していることは間違いないと言っているが、はたしてそうでしょうか?
はっきりいってこれからのことは不確実なことが多いのに著者は決めつけて語っているように思えます。
わかっていることは、著者が「はじめに」で言っているように、大気中のCO2濃度は産業革命前の280ppmから400ppmまで増大していることと、これもまた著者が「すでに1度の上昇が生じているなかで(20頁)」と言っているように、IPCCによれば産業革命前より、地球の平均気温は0.85℃上昇しているということ。
つまり、産業革命以降CO2の排出量が急激に増えていき、地球の平均気温もそれにともなってゆっくりと上昇してきたということです。
はたしてこのゆっくりとした温暖化がわるいことなのか?例えば産業革命前の1850年ごろまでは小氷期と言われ、寒冷化による食糧不足や健康状態の悪化、激しい気象による災害の頻発などが記録として残っています。1℃の気温上昇は小氷期からの戻りにすぎない可能性もあり、400ppm(つまりは大気中に0.04%)のCO2がどこまで温暖化に影響しているのかもわかりません。
こういった事実を見ていけば、著者の言っていることはエビデンスが不十分であり、CO2の増大が気候変動を引き起こしているという説明が成り立っていないことがわかります。
気候危機については、多くの人が危機に直面していると思っているでしょう。なので、ここでいくら説明しても納得できず、そんなこと言って将来世代がどうなってもいいのか?と思うかもしれません。
けれど、将来世代を守るためにこそ、「事実に基づく世界の見方」が必要です。そして、本当に危険なのは何かということを見極めなければ、それこそ将来世代が困ってしまう。
ここで、話を本質に戻すと、著者は気候危機だからCO2を増大させる資本主義はだめだ。だから脱成長のコミュニズムへ移行しなければならないと言っていますが、移行する必要は全くないと言いたい。
「人新世」の時代であろうがなかろうが気候危機はやってくる。そのとき人類を救えるのはそれこそ人類が作り出した技術です。
資本主義には問題点もたくさんありますがメリットもあります。経済成長によって技術は進歩していき、資源の使用量やCO2の排出量も減少していくことが期待できます。
そして、コミュニズムと言って「使用価値」を重視とか、意味のない仕事を削減とか言ってますが、それをだれが決めるのでしょう?労働者たちが生産における意思決定権を握るとも言っていますが、労働者たちにも多様な人たちがいて様々な意見があるわけで、結局は圧の強い人の意見が通ることにならないだろうか?
著者はどうも決めつけというかゼロイチというか二項対立で話をしているようで、それこそ危険な思想のような気がしてなりません。
ここまで、批判的な意見を述べさせてもらいましたが、著者が提起した、グローバルサウスからの収奪や、熱帯雨林の減少、労働問題、エッセンシャルワークの軽視など、改善する必要のある問題はたくさんあると思います。安易にファストフードやファストファッションに手を出さないなど、今自分たちにできることもあるかもしれません。
そして、これまでに良くなってきたこともたくさんあります。
世界中で、石油の流出事故、戦争や紛争の犠牲者、乳幼児の死亡率、災害による死者数、気候に関連する死者数、貧困の割合、オゾン層の破壊、大気汚染などは減り続け、識字率、自然保護、農作物の収穫、絶滅危惧種の保全、シロクマの頭数、電気利用の割合、安全な飲料水の割合などは増え続けています。
資本主義=悪というわけではないし、コミュニズムから学べることもあるかもしれません。読書会の最後でも話題になりましたが、資本主義とコミュニズムのどちらがいいとか二項対立で考えるのではなく、柔軟な視点で考えることが必要なのかもしれません。
あとひとつだけ、グローバルサウスのことを言うのであれば、ウイグル人に対して今現在最低のことをしているあの社会主義国にこそ最優先で言ってほしい。
以上。炎上覚悟の批評をまとめてみました。
これだけ批判的に本を読めたのは初めてで、そういう意味では読んでよかったです。(「ファクトフルネス」が役立ちました)
この本はすごく売れていて、読んだ人の中では肯定的な批評が圧倒的に多いと思いますが、どうかこのような稀な意見にも耳を傾けて考えてみてほしいです
ウマ娘season2が観たい!(関係ないけどw)
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