第35回読書会『モモ』
今回の読み人倶楽部は、2018年7月14日、梅雨も明け、とても暑くなった日の夕方、大清水まなび交流館ミナクルにて、ミヒャエル・エンデの名作「モモ」を課題本として5人での読書会を開催しました。
まずは、この本、いろんな受け取り方があると思い、それぞれどういうふに受け取ったのか、聞いてみました。
- 忙しい社会の縮図
- 自分と宇宙のつながり
- 言葉が熟すまで長い時が必要というシーンが印象的
- 灰色の男たちとのやりとりが今と同じ
- 素朴な文体なのに時にドキッとするような表現があり、読みながらドキドキした。
- 自分の置かれている状況そのもので、今の自分が苦しいと感じているこの世界を表現してくれている。
などなどの意見をいただきました。
似たような意見もある中、それぞれ印象が強かったところは違っていたようです。
この物語には時間泥棒が出てきて、人々の時間を奪っていきます。
では、時間泥棒の正体とは一体何でしょうか?
人間がつくり出した現代社会の仕組みそのものではないでしょうか?
人間がつくり出した仕組みに人間が支配されようとしているのではないかとも思えます。
不思議な少女モモの正体は何でしょうか?
「話を聴く」ということが誰よりも優れていて、他人のために時間を使うのが好きなモモ。
時間泥棒に騙されなかったのはなぜでしょう?
経済的な豊かさも大切ですが、それよりも大切なものがあるのではないでしょうか?
一見役に立つものと立たないもの。本当に大切なのはどちらでしょうか?
死とは?お金とは?欲とは?人生とは?時間とは一体何でしょうか?
この本の中では非常にたくさんのテーマが隠れていて、読み返すたびに新しい発見をしてしまいます。
時間泥棒に騙されて時間を奪われた人達と、生きていて時々苦しいと感じてしまう自分との共通点を見つけました。
それは、お金のためだけに働いていて、仕事に誇りを持てていないということです。
現代社会において、ある程度そういったことは仕方のないことなのでしょうか?
お金は生きるため、さらにはよりよく生きるために稼ぐのだと思います。
けれど、働いている時間も生きている時間なわけです。
それなのに人生のために時間を犠牲にしてしまっては何のために働いているのでしょうか?
仕事を広い意味で考えれば、給料をもらう会社の仕事以外にも、社会に何らかの貢献をしているものは仕事だと思います。
自分の場合は、時々参加しているボランティアの仕事や、読書会の主催など、誇りというか、やりがいというか、やりたくてやっている仕事があります。
そうやって、大切にできる時間を増やしていくことが、苦しみを減らしていくということなのかもしれません。
そして、仕事に誇りを持ち、良く味わって食事をして、好きな本や音楽にじっくりと浸り、誰かの声にしっかりと耳を傾けながら語り合い、日常で触れるものに親しみを込め、一瞬一瞬すべての時間を大切にできたなら…。
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