読書会で経済の話はむずかしい『父が娘に語る 経済の話。』
令和2年2月1日、暖冬とはいえさすがに寒くなった日の午後、ヤニス・バルファキス 著で関美和 訳の『父が娘に語る経済の話』を課題本に読書会を開催しました。
今回も初参加の方をはじめ、たくさん参加していただきありがとうございました。
まずは、みなさんに自由な感想を聞いてみると、
- 神話や人類史と絡めた話がおもしろく、わかりやすかった。
- 経済についてベースができている人にはわかりやすいのかもしれないが、そうでない人にとっては難しい。
- 訳が上手なのかなと思った。
- 経済は苦手だけどこの本は読めた。
- 収容所での取引の話からインフレやデフレのしくみがわかった。
- 難しくて辞書を調べながら読んだ。
- 資本主義や民主主義など、前回の課題本『動物農場』とつながる部分があった。
- 金融危機の話が怖かった。
- 本のジャンルとしては経済学ではなく経済読み物に入ると思うので、経済学の本も別で読みとくのもいい。
- 小説みたいに読めた。
- 格差をなくすために立ち上がろうというけれど世界はそんなに単純ではない。
- マトリックスの世界は幸せなのか?
- マトリックス観てみたい。
- カレー屋さんで半年にわたって流していた音なしマトリックスを見続けたがよくわからなかった。
といった非常に多種多様な意見や感想や?をいただきました。
みなさんの感想を踏まえつつ1章ごと読み解いてみることに。
第1章のタイトルは『なぜこんなに「格差」があるのか?』。
この章が一番印象的で一番読みやすく、余剰から格差が生まれたといった話がおもしろかったという意見があった一方、日本だと格差がわかりづらく、例えば子供に教えるときにどうやって教えるといいのか、子供が教わる環境にないのも問題だねといった話にまで展開しました。
著者がプロローグで述べているように、誰もが経済についてしっかりと意見を言えることがいい社会の必須条件だと思いますが、日本ではそういう人は少ないような気がするし、教育もできていないようだし、まずはそこから変えていかなければならないのだと思います。
第2章のタイトルは『「市場社会」の誕生』。
グッズと商品の違い、交換価値と経験価値の違いについて話し合いました。
第3章のタイトルは『「利益」と「借金」のウエディングマーチ』。
サラリーマンは借金まみれでつらいよという話をしました。
第4署のタイトルは『金融の黒魔術』
この章の最後のほうで、政府の借金である公的債務(国債)についての話があります。公的債務はテレビなどの報道のイメージもあって、何が何でも避けるべきものと思っている人は少なくないと思いますが、著者も述べているように良くも悪くも市場社会に必要なものなのです。
さらに言うと、読書会でも少し言いましたが、国の借金が毎年増えていって、近いうちに破綻するのではないかと思っている人も少なくないと思います。
日本の財政が破綻するかしないかは置いといて、(自分はしないと思ってますが)現在の経済の仕組みでは国債は増えていくようになっています。
それは政府の収支のバランスが問題なのではなく仕組みの問題であり、批判すべきは仕組みなのです。
お金は信用創造によって増えていきます。
誰かが銀行に100万円を預けると銀行は他の誰かに100万円(実際は法定準備率を引いた分)を貸すことができます。この時点で銀行には誰かが預けた100万円と誰かに貸す100万円が同時に存在することになり、お金が増えています。(現金が増えているのではなく、口座に100万円と書くことで増えています。)ここで100万円を借りた人が他の銀行へ100万円を振り込むと、その銀行は振り込まれた100万円はそのままにまた新たに100万円を貸すことができます。これを繰り返すことでお金が増えていき、これを信用創造と言います。
銀行が誰かにお金を貸す→それが使われ回りまわって誰かの預金になる→それをまた誰かに貸す→預金と借金が同時に増えていく なのでお金とは誰かの借金であるといえます。
そして、借金には金利があるので返済のためには世の中のお金が増え続けなければいけない。そうでないと借り手はお金を返すことができなくなってしまうからです。
そのためには、お金は誰かの借金なので、借金が増え続けないといけない。
民間の借金が減っている中、その借金を肩代わりしているのが国債であり、政府が借金をすることで民間のお金が増えることになります。
つまり、「国の借金=民間のお金」であるといえます。
問題は、財政破綻よりも、この「お金が増え続ける」という仕組みです。
増え続けるお金とバランスをとるためには、モノやサービスといった価値も増えていかなければならず、経済成長を強制されます。
すると、お金のために必死で働き、消費と生産が目的となり、お金にならないことはやらず、お金にならない価値は見捨てられ、教育などの本当に大事なところはコストカットされ、地球環境も破壊され続けていきます。
お金の仕組みについて、今一度議論し考える時期に来ているのではないでしょうか。
読書会の時間は本当に短くて、5,6,7,8章エピローグと駆け足で進めて行きました。
何も知らずに仮想現実を見続けることは幸せなのか?という疑問について話しました。
はたしてどうなのでしょうか。仮想現実でも幸せならいいのかもしれない。人それぞれがどう考えるかにもよるのだと思います。
ただ一つ言わせてもらうと、人の心は真実を知ろうとするし、真実を知ろうとすることは本当の意味での「幸福の条件」なのではないでしょうか。
この本は、経済学ではなく、経済読み物であるといった指摘もあったように、難しい経済学の話ではなく、経済の誕生から現在の仕組みと問題点、そして幸福についてまで語られた本でしたが、それでも自分の言葉で経済について話すことがこれほど難しいのかと感じる読書会でもありました。
訳者のあとがきにもあったように、日本は民主主義指数の低い国です。どうやら政治への参加という項目でポイントを下げているようです。選挙の投票率もそうですが、経済についてしっかりと意見を言える人が少ないように感じます。
政治は経済と直結します。経済とは政治に大きく左右されるからです。政治は国民と直結します。政治の質は国民の質の反映でしかないからです。経済は国民の命と直結します。今40歳前後の人たちは就職氷河期世代と言われ、まともに就職できなかった人たちが多くいて、それが今でも続いています。経済が悪化すると自殺者も増えて少なくない人たちが命を落とします。
だからこそ、誰もが経済についてしっかりと意見を言える社会が必要であり、そのためには、まず、自分が読み人倶楽部のリーダーとしてそういう人になりたいと思います。
現時点で経済学の本など読んだことがなく、難しいことは何も知らないんですが…
以上、読書会後の考察主に書かせていただきました。まだまだ言いたいことはあるけれど、この辺にしておきます。
今回司会をやらせてもらいましたが、なかなかみんなの話を引き出して広げることができず、司会の難しさを改めて感じてしまいました。
司会が上手な人のいいところを学び、もっと上手くできるようにしたいと思っているので、今後ともよろしくお願いいたします。
懇親会でもたくさん話をすることができ、これからの読み人倶楽部についての話でも盛り上がりました。
今後読み人倶楽部は、キャンプ、山登り、100キロ走、ツリーハウスを作ってそこを拠点に政党を立ち上げ、株式会社化し、最終的には宇宙を目指すことに!
おつかれさまでした。
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